2023年02月06,13,20日

2月6日・月曜日。晴れ。

2月13日・月曜日。雨。

2月20日・月曜日。晴れ。三寒四温の頃と言うが、厳寒と春暖の交代激しく、体の軸が狂う。静岡県河津市では、はや桜の満開とか。なお、本日は前回の文章を整え、やや加筆訂正した。

 

突然のことながら、この所筆者の身辺多忙を極め、時に本欄の休載もありそうです。あらかじめこの事を一言し、ご寛容のほど宜しくお願い申し上げます。ただし、筆者には書くべき素材は多々あり、休載している暇などないことを、併せてここに付言させていただきます。

 

今次のウクライナ戦争に、ロシア政府は損耗する兵士の不足を補うため犯罪者を入隊させているとは、以前ここでも触れる機会があった。その彼らが順次兵役を解かれ、自由の身となって、社会に復帰する頃となったらしい。これをニューヨークタイムズでは「ウクライナ戦争からの犯罪者帰還がもたらす社会的危機」(2/1)として報じている。ジッと考えると、何か不安を煽る恐ろしい話ではないか。

彼らのほとんどは民兵組織・ワグネル軍団(創立者はエブゲニー・プリゴジンである。オリガルヒの一人であり、プーチンの側近にして、戦争強硬派と言われる)に編入された。総数4万人に及び、その内3万人は、未確認ながら、すでに脱走したか、死亡ないし負傷者とみられていることから、その損耗は激しい。微罪の窃盗犯、強奪犯から、累犯の強姦魔、殺人犯まで多様である。

プリゴジンはロシアの諸所の監獄に出向き、あるいはビデオメッセージを送り、囚人たちの入隊を説いて回ったという。彼自身、強盗、詐欺等の罪で9年の獄中経験者であり、そこでの生活が囚人たちをどう締め上げ、凶暴にしていくかをよく知っていた。だから、言う。「俺には、戦場で敵を殺せるお前たちの犯行能力が必要なんだ」。もちろん、兵役が終えたのちには(ほぼ半年)、彼らは「犯罪の免赦、失効を記した証書」を付与され、同時に自由、結婚、教育といった市民生活上の権利も復権される。「お前たちがこのようにして社会に復帰するのを期待している…そして、祝福をうけ、前に進め」。
ロシア人権団体によれば、この種の恩赦、赦免状がロシアで発行されるのは、ごく稀である。時間と複雑な法的手続きを要することもその一因だが、これ程の規模のものは、かつてなかった。ここからも、プリゴジンの政治力がいかなるものか見て取れるが、それ以上に、こうまでしなければ兵の補充が出来ないほど露軍は窮しており、切羽詰まっているのだろう。だからなのか、これに反対するものたちに対して、「ならば、お前たちが軍の招集に応じるのか」と、彼の苛立った話が別便にあった。

筆者は、犯罪者が刑に服し、真っ当な社会人として復帰する可能性を否定しない。また、社会は彼らを支援し、更生させる環境を整える施策を、今後とも積極的に進めるべきである。それを前提にして、だが、言いたい。

これまで筆者は、ベトナム戦争に従軍した元米軍兵士の少なからぬ者たちが、社会生活の中で適応できず、精神傷害に苦悩し、あるいは凶悪な犯罪に手を染めた事例を、映画、小説等で教えられてきた。普通の市民にしてそうであれば、獄中で一層凶悪になった犯罪者が、軍によって殺人の技術を与えられ、戦場でこれを実践しつつ殺人行為に麻痺してしまうとしたらどうであろう。しかもそうした集団が、多数、全き社会人として復帰するというのである。ここには、空恐ろしい何物かを感じざるを得ない。記事は、言う。「このことは、どのような社会にたいしても測りがたい様々な結果をもたらす」。

プーチンにとって、これらの犠牲は彼の戦争目的に比べれば、取るに足らないものなのだろうか。あるいは、数万程度の「帰還兵」であれば、1億3千万人の国民に飲み込まれ、案ずるほどの影響力は持たないと言いたいのか。これにたいする人権団体や法律家らの見立ては、こうである。「傭兵軍が…ロシア犯罪者の徴兵を認めたプーチンの決定は、彼の23年間の統治の今後を分ける分水嶺となった」。すなわち、ロシアは今後、それ以前とは異質の社会へと転換するだろうというのである。これはとりわけ、法規範や法意識を壊し、社会組織を弱めてしまうという点で、社会の存立にとって深刻な結果をもたらすのではないだろうか。そうして、この手法が他国に蔓延すれば、世界はいかなる状況に陥ることになるのであろう(この項、終わり)。(2/10、朝日新聞は、ブリゴジンが受刑者の募集を「完全に停止した」とSNSで表明した、と報じている。)


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