2022年11月11,14日

11月11日・金曜日。晴れ。日中は汗ばむようであったが、夕暮れともなれば、やはり冷える。晩秋からそろそろ初冬の入りか。

11月14日・月曜日。晴れ。

 

本日は本欄「10/17・月」の論題を引き継ぎたい。そこでは、侵略国の攻撃がいかほど激烈であろうと、国土を死守しようとする国民はこれに屈せず、逆に結束して友好国の支援と共に、ついに撃退する戦史の多いことを、第二次大戦中のヒトラー対チャーチルのロンドン空襲の攻防戦を例に検討してみた。そして、ロシア/ウクライナ戦争もそうした歩みを辿っているように見えるというのが、そこでの結論であった。

ニューヨークタイムズの「暗闇に優雅に揺れる首都」(11/8)は、まさにそれをなぞるかのような記事である。小見出しは「電力配給制のさなか、ウクライナ人は夕闇の生活に適応することを学びつつある」とある。

夜の帳(とばり)の降りる頃、街路では「スマートフォンのフラッシュライトが妖精の光のように揺らめきはじめ家路を照らす。散歩の愛犬の首には白熱光のスティックがささり、花屋の店頭に明かりが灯ると、ライラック、シャクヤクといった色合いの光がキラキラ点滅し、道行く子供たちは安全のために光を反射する服を着せられている」。夜露に濡れる道路は、パトロールするパトカーの放なつブルーの明かりに淡く反射し、屋台を照らすランプの火影が揺れ、道路際のベンチに座る一人の少年がアコーディオンを奏でる。

プーチンの露軍はウクライナ征服どころか、今や占領した地域の撤退を余儀なくされる始末だ。そこで彼の戦略は変わった。とくに首都キーウに対しては無差別の砲撃を敢行し、電力、水道等重要なライフラインを徹底的に破壊し、市民への生活困窮を強いて戦意の喪失を狙った。厳冬の何たるかを知る彼ら市民には、恐怖であるに違いない。

事実、首都砲撃の再開によって首都に戻った市民の多くが地方に疎開をしたとも報じられている。しかしここに留まると決意した人々は、それにただ震え慄くことはなかった。「暗闇と光のダンス、影とシルエットの揺らめき、時に不便と他方で美しさ」の交錯するキーウの生活を、苦しみと共に楽しむしたたかさを世界に示してもいるのである。オルガ・ミンッチク(39歳)の場合はこうだ。愛犬にカラフルなLEDをつけて、黄昏れの街に散歩に出かけるころ合いは、彼女にとって気に入りの一時でもある。「私が犬に明りをつけて歩いていると、同じような歩行者に合うわ。そんな時、私たちは街路樹にお互いの明かりを括り付けるの。それは、まるでパーティーをしているような雰囲気になるのよ」。

とすればこれは、過日の「天声人語」(11/9)で描かれたように、市民たちは「零下の真冬に電気も水も暖房もなくなる」首都キーウでただ恐怖に震えるだけではなく、もっと逞しく生き抜いている様子を伝えているのである。そして、そのことによって我われは、逆に彼らから励まされているのではないか。であれば、世界は彼らを支援し、その勇気を挫いては成らない(この項、終わり)。


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