2021年5月19,21日

5月19日・水曜日。雨。先に東日本大震災に関わる霊体験を、奥野修司『魂でもいいから、そばにいて』に依りながら記したが、その後同氏の『看取り先生の遺言 2000人以上を看取った、がん専門医の「往生伝」』(文春文庫・2016)、リチャード・ロイド・パリー『津波の霊たち 3・11死と生の物語』(濱野大道訳・ハヤカワ・ノンフィクション文庫・2021)を読み、前回の思いを深くした。特に後者は圧巻の叙述であり、訳文も見事。なお、本書は、読者から教えられた。記して謝意を表する。

4月の総歩数・273071歩、1日平均歩数・9102歩、最高・14644歩、最低・4629歩であった。

5月21日・金曜日。雨。例年、この時期になると、沖縄・九州から始まる列島全体を覆う豪雨禍はもはや年中行事のようであり、これに対する対策とてなく、運命と諦める他はないのか。それにしても、気候の凶暴化は、益々、熾烈の度を増し、温暖化対策の遅滞は許されない。本日、東京都の2倍の面積を持つ、世界第1の氷山が南極大陸から遊離したとの報あり(朝日新聞)。これは、温暖化との直接の因果関係はないそうだが、大陸での氷河の減少は進行中であるらしい。

 

朝日新聞・5/2(日)の第1面には、またもや暗澹とさせられた。「失踪村 お金も仕事もない」、「失踪村 ベトナム人技能実習生 」、「元実習生たち 過酷な労働 夢砕かれて」の見だしが躍り、突きつけられた現実に、日本人としての矜持をへし折るようなやりきれなさと共に、いい加減にしろとの憤りを覚える。これは日本政府の主導のもとに進められ、それゆえ政府の責任も問われる事業でありながら、こうした惨状が繰り返され、放置されるのは、世界に恥を晒すことでもある。

その惨状は、これまでも指摘し、ここで改めて繰り返すまでも無かろう。だが、あえて言えば、それはわが国が今日に至るまでに経験せざるを得なかった、資本主義社会生成期の暴力的で酷薄な物語を、この平成の時代に、法治の及ばぬ外国人労働者たちに再現しているかのような状況である。

「来日8年のジンさんは徳島県の縫製会社で、1時間に2千足の靴下を作るノルマを課せられた。どう頑張っても700足しか作れなかった。日曜以外は朝7時から深夜まで働き、月給は10万円。6畳一間に7人で住まわされ、睡眠時間は3時間しかなかったという。ジンさんを含めて3人が耐えきれず逃げた」。賃金未払い・カットや暴力的扱いが加わり、そうした逃亡実習生の数は、北関東全体で2~3千人にもなると言う。だが、これは『女工哀史』(細井和喜蔵・1925)の世界とどう違うのだろう。我われはそこからどれだけ成長したのであろうか。何も学ばない日本、はここにもある。

相場英雄『アンダークラス』(小学館・2016)は、その現代版として読まれるべき価値がある。ここでは、同じように、縫製会社で働く外国人女性が嘗めねばならなかった悲惨と性的恥辱が小説として描かれたが、それは上記の世界を別の視覚から抉り出した。本書の帯に付された一文には、ゾッとさせられるであろう。「日本人はこうしてアジアの「下級国民」になっていく」(橘玲・作家)。

当局はこうした事態を知らない分けでは無かろう。仮に知った上での、放置であれば、政府が世界に対して法の支配、人権・人道を主張し、中国の人権侵害を批判するのは、笑止の沙汰と言うほかはない。

我われは、現在、救いがたい自惚れ、錯誤に陥っているのではなかろうか。アジアや世界の貧困国の人びとに、日本で働ける、と呼びかければ、一も二も無く、群がるようにやって来る、と。そんなことには、最早ならない。実習生制度一つをとっても、韓国にはるかに及ばぬことは、すでに述べた。次回は韓国に行きたい、と言った彼らの言葉がそれを示すが、このままでは「アジアの「下級国民」」どころか、世界から見放された国民になり果てると、大いに危惧するのであるが、それは単なる杞憂なのであろうか(以下次回)。


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