2021年1月27,29日

1月27日・水曜日。晴れ。前回の文章、一箇所段落を組み替え、また若干手直しをした。

1月29日・金曜日。晴れ。

 

新聞の一面で、こんな見出しをいきなり眼にしたら、どんな印象を持たれよう。「実習生頼み 被災地に不安」、「「いないと街なくなる」定住には壁」(朝日新聞・令和3・1/25)。

10年前の大震災によって壊滅的な被害を負った東北地方の被災地の現状である。ただでさえ人口減少に苦しむ中、いまだ震災とその後の復興も道半ばの只中にありながら、現在のコロナ禍がこれに追い打ちをかけてきた。このままでは産業の維持はおろか、地域の存続すら危ぶまれる状況に陥った。そんな苦境が眼前に迫る。宮城県知事の言葉は深刻である。「人口の減少は(津波被害にあった)沿岸部で最大の課題。新たな人に移り住んでもらうことは非常に重要」である。しかもこれは、ただ東北地方に限らず、大都市圏の恩恵に浴しえない列島の現状でもあるだろう。まさにそれは「日本全体の縮図でもある」のだ。

記事によれば、わが国の生産年齢人口(15~64歳)はこの10年間で6%の減少であるのに対し(これ自体、大変な数だ)、被災3県(岩手、宮城、福島)では11%にも及ぶ。この落ち込みを埋めているのが、海外からの実習生たちなのである。例えば、三陸沿岸部の水産加工業者「かわむら」の場合、従業員300人の内、実習生が70人を占めると言う。この一事からも当地の人出不足の深刻さは明らかだが、現在のコロナ禍により彼ら実習生の入国がママならず、それによる経済の停滞は免れない。ちなみに、昨年6月時点での全国の実習生は約40万人と言われ、同様の問題は全国的であると言ってよかろう。

以上は、コロナが惹き起こした一時的な人出不足に過ぎず、感染症の終了と共に解消される問題なのか。そうではない。今まで隠されていた実習生制度の欠陥が、現在のコロナ禍によって炙り出された事だと考えなければならない。すでに本欄でも触れたことだが(昨年12/7、9の欄参照)、多くの実習生が取得する「1号資格」の場合、5年間の滞在期間中に目指す技術を習得し、母国に帰国しなければならない。家族の帯同も許されていない。明け透けに言えば、本制度の真意は、移民は拒否して、労働力の不足は補いたい、そんな身勝手な趣旨であろう。

これでは、彼らは日本に居つかない。石巻市のベトナム実習生の「次は、韓国に行きたい」との言葉は痛烈である。彼女は手取り12万円のうち2万円を手許に残し、あとは家族に送る。ここには来日のために借りた100万円の返済分も含まれる。最低賃金は韓国に比して高くもなければ、何より韓国では採用手続きはブローカーを排して、国が責任を持ち、これだけでも渡航準備費用は格段に違う。

斉藤善久氏(神戸大・労働法)は言う。「日本は最低賃金の水準が先進国の中で低いうえ、政府が外国人を労働力の補填としか見ていない。このままでは、外国人から選ばれなくなる。…家族の帯同や長期の在留資格を広く認め、日本人と支え合って暮らせる社会をつくるべきだ」。先の「かわむら」の会長は現地の惨状を知るだけに、さらに深刻である。「外国人がいなくなれば街がなくなる。定住できるように見直すべきだ」。

我われは何処か、思い上がっていないだろうか。公徳心の高さがコロナを抑え、わが技術力の水準は原子力を縦横に駆使でき(1/25)、また途上国の誰もが日本に憧れている。だから、来て良いと言えば、みんなやって来る。そんな思い上がりが、折角の実習生を殴りつけ、不要になればオッポリ出すことも平気なのであろう(12/7・9)。だが、そのツケはやがて高い支払いを求められることになるのではないか(この項、終わり)。


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