2020年6月10,12日

6月10日・水曜日。晴れ。事務所には来たが、別件の仕事のため発信できず、残念。

6月12日・金曜日。晴れ。

 

前回、米国の現在の混乱について触れたが、ここで一点だけ補足しておきたい。以下は朝日新聞6/8・(月)朝刊による。「コロナの米死者「命の格差」」という大見出しのもと、感染死亡者数が、ニュージャージー州アンドーバーにある「高齢者施設に集中」して見られたと言う。「金勘定」を優先させる経営方針の結果であるらしい。

そのためか以前から、施設のサービスは「基準未満」であるとの行政指導を受けていた。700床を擁する州内最大を誇る施設ではあるが、経営権が3年前に投資会社に移譲されて以来、ベテラン職員は解雇され、新職員の教育も十分ではなかった。当然、利用者は他への転居を考えるが、「金銭面」から叶わなかった。

これは単なる一例に過ぎない。米国のコロナ死亡者はすでに11万人に達する。メディアの分析では、その3分の1が高齢者施設内での事であり、施設の状況も無視できない。さらにニューヨーク・タイムズによれば、「入居者の25%以上が黒人やヒスパニックの施設では、白人が多い施設の倍以上の割合で感染者が出ている」。この現状に、利用者の怒りが響く。「悲劇ではすまされない。ヘッジファンドが運営する施設も多く、金勘定が優先されている」。

米国の「パンデミック、大量失業、人種差別」は、多くの黒人はじめ社会的弱者が蒙る三重苦である。しかもこれらの苦しみはそれぞれ別個のものでは無く、「根深く結」ばれているだけに、その困苦は一層悲惨である。人種差別はしばしば、可能性のある職業への道を閉ざし、そうした人びとに経済的・社会的な弱者を強いるが、それは常に失業と隣り合わせの身分を免れない。貧困は衣食住、教育の条件を劣化させ、加えて医療への接近を阻む。疫病の蔓延には第一の犠牲者となろう。こうして「人種の違い、経済の格差に「命の格差」がついて回る」(沢村亙・朝日新聞アメリカ総局長)事になる。

コロナ禍は世界中でそれぞれの国の弱点、矛盾を抉り出し、わが国もソーシャルワーカー、派遣社員、一人親家族、また特に中小の事業者達からの怨嗟や悲鳴のような声が響くが、米国ほどの深刻な社会的対立、騒動はまだ免れている。確かに、取られた様々な対策は結果から見て穏便であり、その割には疫病の感染者・死亡者数が他国に比して抑制されていることが、その一因であるかもしれない(ここには、政府当局への国民の従順な対応ぶりは、欧米に比べて個人主義的な自立心の欠如の表れであり、民主主義の未成熟の証だ、との厳しい批判も見られたのだが)。

とは言え、このまま事態の成り行きに任せ、セーフティーネットを疎かにしたまま経済発展至上主義に立って、そこからこぼれ落ちた、しかし社会を支える職種や人々をそのままに放置すれば、社会基盤は劣化し、米国に見る騒乱の芽がいつ発生するか知れたものでは無い(以下次回)。


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