2022年02月18日

2月18日・金曜日。晴れ。本日は、予定を変更し、現在、深刻なウクライナ問題について一言したい。

 

戦争でまず失われるのは、真実だと言われる。両者とも不都合な真実を隠し、虚偽報道を流して自己の攻撃を正当化しようとするからである。しばしば、強者はフェイクニュースを捏造しながら、相手を挑発し、無理にでも戦闘を惹起して、それを機に本格的な戦争に巻き込む。米側から、しきりにロシアのフェイクニュースを暴露し、これを世界に発信しているのも、露のそうした挑発行為を牽制しようとしたからであろう。

しかしそれでも、昨日、ついにウクライナ東部で小競り合いが始まった。ウクライナ側に戦争の利益は全くないことから、仕掛けたのは露側であることは間違いない。これをぼやのうちに収め、外交交渉に引き戻して決着をつけられるか否かは、ひとえに西側諸国の決意と結束力にかかっている。

だが、分はプーチンにありそうだ。彼は西側には、戦争をしてまでウクライナを防衛しようという意思が無い事を見切っている。すでにマクロンがウクライナ切り離しをほのめかしているように見えるし、ドイツの態度は、武器供給の件に見るように、きわめて軟弱である。そして、バイデンはウクライナへの戦力投入を明確に否定した。当然であろう。露との直接対決ともなれば、世界大戦は免れない。しかもそれは、第二次世界大戦とは次元の異なる、地球それ自体の存続も問われかねない、徹底した殲滅戦にまで至りうるかもしれない。これに比べたら、ウクライナはそれほどの重要性を持たない、世界の指導者たちが、そう判断してもやむを得ないであろう。

よって、西側はあれこれ言っても、結局は折れる、これがプーチンの読みであろう。そのためには、戦争も辞さぬという切羽詰まった覚悟、本気度を示す必要もあろう。戦車、ミサイル、戦艦、爆撃機からなる12、3万の大軍の展開は、ウクライナはもちろん、世界の脅威である。

しかも、である。こうした恫喝は、かつて成功したのである。ヒトラーは政権獲得後(1933)、国力の増進と軍事力の拡大、戦勝国への賠償金支払いを停止しするなどで、ベルサイユ条約を破棄し、オーストリア他周辺国を傘下に収めていった。その間、英首相チェンバレンはじめ西側指導者は、ヒトラーの無理難題、要求を、これが最後、この犠牲を忍びさえすれば、ヒトラーの野望は収まり、欧州の平和は保たれると夢想し、自重し続けたのである。しかし、彼の征服欲、世界帝国の野望は収まらなかった。結局、ポーランドをスターリンと共に、分割し(1939)、その直後、ポーランド侵攻からソヴィエト侵略と続いて、世界大戦へとなだれ込んだ。この時、野にあって、ヒトラーの暴虐に切歯扼腕し、一撃を加えるべしと説いていたのは、チャーチルのみであったという(この間の事情はリード、フィッシャー共著・根岸隆夫訳『ヒトラーとスターリン 死の抱擁の瞬間』上・下・みすず書房2001の叙述が印象的である。また、サルトル著・海老坂武・澤田直訳『自由への道』全6巻・岩波文庫2009参照)。

上記のように、ウクライナ東部で小競り合いがあったという。これが一気に発火するかどうかは、分からない。しかし、思わぬ箇所から大火になれば、事態は深刻になる。ウクライナを見殺しにするのか、あるいは世界大戦の瀬戸際にいたる。その時、中国は台湾を目指すだろう。いずれにしても、世界秩序は、今後、一層不安定化し、激動に巻き込まれるのかもしれないない。


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