2021年12月3日

12月3日・金曜日。晴れ。温暖な日よりである。

 

一口に資源の枯渇といっても、その対象は果てしがない。科学の発展が、これまでは見向きもされなかった多様な素材を、一気に貴重な資源として浮上させた。原子力機器、電子機器の製造に必須のものとされるレアメタル類はその典型だろう。だが、そこではこれに従事する労働者たちの劣悪な労働環境が、彼らの命を危うくするほどの問題がある。さらには、希少素材は直ちに掘りつくされ、石油の場合と同様、次第に掘削地域を広げ、地球深くに侵攻し、こうしてわれらの大地に甚大なダメージを与えることになるのは必然である。事実、関連技術の巨大化と列強諸国間の競争がそれらを埋蔵するアフリカ等の途上国を急襲し、広大な大地を乱掘する映像は、見るも痛ましいものがある(上の文書を記した夕刻、たまたまニューヨークタイムズ・12/3付の記事「コンゴ国コバルトをめぐるライバル間の監視 リーダーシップを求める闘争、電気自動車用鉱山の改革、危うし」を読み、まさに我が思うところが示された)。

以上と同様、筆者にとって特に気になるのは、東南アジアほかの熱帯雨林に特有な、生物の多様性ともかかわる、膨大かつ多様な菌類に対する権益問題である。これまで熱帯雨林が人類の侵入から守られ、あるバランスの中で生態系を維持してきたのは、こうした菌類、特に人間に対しては各種病原菌の存在であったと、マクニールの名著『疫病と世界史』から教えられた。それが、20世紀に入って急激にして広大な乱伐に見舞われ、日々、その多様性を失っている。人類はこうして自らの存在条件を危うくしているのである。

しかも、これら菌類は単に疾病の原因であるばかりか、未来の薬品の素材となる可能性が益々明らかになるにつけ、それらが先進国政府をバックにした巨大製薬会社によって、次第に蚕食されかねない状況もあるという。つまりこれは、先進国が開発援助や薬品製品化のための膨大な研究・開発費を理由にして、菌類はじめとする多様な生物・遺伝資源に対する途上国自身の所有権を召し上げようとする危険性の問題である(以下次回)。


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