2020年12月7,9日

12月7日・月曜日。晴れ。過日のジャパンタイムズ(11/4)に、気候変動によって、地球規模の健康脅威が「強まる」とあった。ランセット(英医学雑誌)によりながら、今年は記録に残る2番目の暑さであり、状況をこのまま放置すれば、「COVID-19の様なパンデミック」に今後も見舞われるだろうと警告する。温暖化は地球上の全生物に複合的で深刻な脅威を強めている。人類はまだ、この危機を回避できるのだろうか。

12月9日・水曜日。曇り。本日、前回の文章の修正にとどむ。

 

この記事をどう読んだらいいのだろう。「実習生 ベトナム帰りたくとも」、「寺が保護 帰国まで共同生活」(朝日新聞11/27・夕)。現在(2019年時点)、技能実習生として滞在しているベトナム人は中国人を抜き22万人を数える。これは在日ベトナム人41万人の半数に及ぶが、ベトナム人全体の増加もこの10年間で10倍に達すると言う。言うまでもなく、わが国の労働力不足のゆえである。

技能実習制度とは、日本国が定めた法律に基づき、開発途上地域への技能移転を図り、経済発展をになえ得る人材育成を、その目的とすることであるようだ。であれば、単なる労働力補てんのためではない、れっきとした教育制度であり、受け入れ機関はそれに必要な仕組みやカリキュラムを整え、また違反に対する罰則も無ければなるまい。

ではこの実態はどうか。「あまりにつらく、最初は日本人が嫌いになった」とは、最近この寺に駆け込んだ実習生の言葉である。5年前に来日し、熊本県でビニールハウスを組み立てる仕事に就く。月収17万と言われながら、9万円の支給。残業代なしの一日10時間労働に加え、田んぼの中のコンテナに3人住まいを強いられた。屋外のシャワー、方言が分からず聞き返せば、怒鳴られ、蹴られるの惨状に、1年で逃げ出す。その後埼玉県で、溶接の職を得、同僚の優しさに励まされ仕事を続けたが、コロナ禍で失職。その後、オーバーステイで逮捕され、ベトナム人保護の寺として知られる大恩時に身を寄せた。

記事には、横浜市で左官の職に就いた実習生の例もある。現場で殴られ、「死ね」と面罵されながら耐えた仕事も、9月に解雇される。駅で野宿し、食事にも窮しながら、寺にたどり着いたと言う。いずれも不要になったその時点で、容赦なく放り出して済まされる制度の不備に呆れるが、受け入れ先への監視機能はどうなっているのだろう。それにしても謳われた理念と現実の乖離の甚だしさに呆然とせざるを得ない。我われはかくも酷薄な国民だったのだろうか。そも、人間とはそう言う存在なのか。

実習生の現状は、ベトナム人以外でも同様な状況にあるのではないか。彼らの多くは、来日のための多額な借金に縛られ、給料のほとんどをその支払いに充てるため、もはや帰国の旅費の当てもない。寺院に残されている声も悲惨である。「コロナで失業し、うつ病になり自殺未遂をした。助けて」、「生活費もない。何でもするから助けて下さい(妊娠5か月の女性)」。最近発覚した群馬県でのベトナム人の犯罪は、こうした状況の延長線上の事であったのだろう。彼らの犯した犯罪は、法に基づき処分するのは当然だが、しかし事は、それで済ませられる話ではない。

たしかに、この種の問題は、多少とも世界の何処にもあるのだろう。しかし、ここには根深い人権意識の欠落がある。高価な機械や道具なら大事にされようものを、替えのきく人間は粗末にする。一銭五厘の兵隊よりも軍馬を大事にした旧軍隊の思考と同じである。こうして、約束した給金は支払わず、暴行や奴隷化が横行すれば、わが国は世界から見放されよう。その結果、より深刻な人出不足に見舞われても、必要な人材、人力を獲得する機会、競争力を失うことになりはしないか。今世紀中には、世界の人口推移はピークアウトする、つまりそれ以降の人口は減少に向かうと言う報告もあるから、それほど安閑としてはいられまい。

それ以上に、これを放置すれば、近い将来、滞在する外国人労働者たちはわが国に対する不信と怨念を募らせ、はてはそれがテロの温床にならないかと恐れる。また、こうした人間を粗末にする土壌は、外国人たちに対するばかりか、日本人の派遣労働者への差別と同根のものであろう。これらについては、すでに本欄でもしばしば見てきたところであるが、結局それは、国内の断裂、闘争の種となるか、わが国の制度的な劣化につながるのではないかと深く憂慮する。以上を理解するのに、小難しい理屈や知識は何もいらない。ただ、自分が同じ境遇にあったなら、いかに悲惨で、恐ろしいことかと、想像すれば済むことである(以下次回)。


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