2020年11月16,18日

11月16日・月曜日。晴れ。先週1週間を、休載とした。歯の故障により、離乳食風、介護食風の粥に類した食事には大いにマイッタ。いずれそんな時のための準備と覚悟だと、天は我に強いられたのであろうか。それにしても、週2,3日、こうして出かけられることの、有難さを思う。

11月18日・水曜日。晴れ。本日は前回の文章に若干手を入れたに留む。かくて文意は通じ易くなったと、自ら慰める。

なお、先日、朝日・夕刊(11/13・金)に無気味な記事を読む。25年前(1995年3月)、オウム真理教が犯した地下鉄サリン事件について、オウムの後継団体「アレフ」は、当事件は「教団以外の者による陰謀」だと主張し、インターネット上に「CIAのでっち上げた事件ではないか」と喧伝しているとの事である。この恐ろしさは、この種の虚偽の言説が時と共に捻じ曲げられ、事件を知らない若者たちがこれを信じて、再びカルト教団の復活を予感させることである。たったの25年間での捏造が、かくも容易となれば、百年前の事件はどうなるのであろう。好き勝手な改造、捏造など思いのままではないか。

以上は、公文書その他記録文書類の保存、収集が如何に重要であるかを改めて警告している。とすれば、昨今の役所の公文書その他の管理の杜撰さに対し、国民は一層注視していかなければならないはずだ。

 

さきの「二つの国」は、米国だけの事ではない。日本、ヨーロッパ、中国、韓国等は、いずれも同様の問題を抱えているのではないか。グローバル化により、国内にあった製造業はより安価な労働力や生産の適地を求めて諸国へ移転し、同時に資本と技術も引き抜かれ、国内産業は空洞化せざるを得ない。それは当然、関連する国内の膨大な下請け業者や商業施設を衰退させ、これは一国全体に波及する。それにしても、「日本製鉄 呉製鉄所を閉鎖へ」(朝日新聞‘20,2/7)の記事は衝撃的であった。さらに同社はこれに留まらず、非効率な製鉄所の閉鎖も次々計画しているようであり、これがかつて「鉄は国家なり」と謳歌した、わが国の製鉄業の現在である。まさに、ラストベルトは米国だけの話ではないのである。

しかも、そのグローバル化の密度は途方もない。例えば自動車生産は移転先の工場で一貫して生産され、完結するのではない。ある部品はA国、原料はB国からというように、細分化と共に特化され、網目のようにくみ上げられたグローバルなサプライチェーンが成立しているのである。であれば、今般のコロナ禍や大規模な自然災害が起これば、その国から供給されるはずの部品が途絶え、日本国内での生産が中止に追い込まれることもあったと言う。それ故、日本政府は、現在中国に集中しすぎている生産拠点の分散化を、その政治リスクも考慮して検討しているとは、過日の報道にあるとおりである。

こうした国外移転の産業とは反対に、通信・金融・証券・技術部門および、広告産業ほかの関連産業部門(但し金融部門は現下の低金利政策と融資先の縮小により低迷しているが)は高成長を享受し続け、それらが集中する大都市圏の商業圏は空前の繁栄を誇っている。東京に見る沿海諸都市部に展開される高層ビル群、マンション街はその象徴であろう。

熱狂的なトランプ支持者たちの怒りは、一面もっともであり、よく分かるにしても、これをそのまま放置してはならない。分断された「二つの国」は是非にも繋げられなければならない。何ゆえにかくなったかを解き明かし、相互の理解を進める事であろう。それにしても、筆者は問いたい。国をここまで分断させたこれまでの米国政府の経済政策はどこまで真面であったのか。4年前、民主党は長年の熱烈な支持者から見捨てられる憂き目にあった。つまり、党は彼らの真の要望に向き合って来なかったのである。それを、今回どれ程回復したのであろうか。

だが他方で、トランプ大統領はこの4年間で、両者の分断を埋める努力、政策をいか程進めてきたのであろうか。外交政策はさておき、国内の貧富の格差、人種差別、地球温暖化を放置し、むしろ分断を煽り、それを利用し、熱狂的な支持者たちを獲得してきたのではなかったか。彼の減税政策は富裕層に一層優位であり、貧困層にはさほどの恩恵にはならない。彼らには減税されるほどの所得が薄いからである。さらに各種の社会保障への攻撃は報道される限りでも目に余る。

ともあれ、今や米国はじめ「二つの国」の分断に苦しむ諸国は、癒されなければならない。その第一は、経済格差の是正であり、米国に見る極端な貧富の解消ではないのか。その手掛かりは、まずは税制を見直し、累進課税による所得の再配分機能を再生させることだ。こうして政治的にも健全な中産階層が復活し、社会の安定性は増すことになるだろう(同様の見解として、デミン前掲書参照。また、少々ほめ過ぎだが、ジェスパー・コル(ジャパンタイムズ定期寄稿者)の論説・「米国、日本に学べ」(ジャパンタイムズ‘20、11/14)を挙げておく)(以下次回)。


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