2020年11月6日

11月6日・金曜日。曇り。米大統領選、いまだ決着を見ず、それにつれ不穏な空気が醸成されつつある。だがここは米国の良識を信じ、事態の平穏な解決を祈る他はない。

 

一昨日(11/4・水)の朝日新聞特集記事の中に、「進む分断 異なる意見の現実知って」と題する記事があり、小欄ながら、米国トランプ支持者の本音の一端に触れ、彼らの支持理由を簡潔に伝えている。

ここで言う支持者とは、「ラストベルト」と称される中西部の、殊にオハイオ州の製鉄業労働者たちである。彼らは長年民主党支持者であった。だが、前回の大統領選以来、共和党と言うよりも、トランプ大統領支持者へと転換する。その理由は、彼らの次の不満の内に凝縮されていよう。「米国は二つの国でできている。カリフォルニア州の連中が荷下ろしする輸入品は、かつて俺たちが作っていたもの。俺たちの仕事を奪っていることに連中は気づいていない」。

たしかに、現実に起こっていることは、その通りであろう。米国東西の二つの海岸線沿岸部では、輸出入の交易が栄え、大都市が続き、金融・不動産・技術・電子部門といった知識集約的な産業は天井知らずの成長を謳歌しながら、中西部の製鉄・自動車等の製造業は衰退の一途をたどる。しかもそれら製造業の多くは、安価な労働力と巨大な市場に惹かれて、中国他アジア地域へと移転してしまった。

これぞ、政府の規制、介入は不要であり、唯一取るべき政策は国内の治安と戦争抑止に尽きると言わんばかりの、夜警国家的な新自由主義論に基づき、グローバル化を推進してきた経済政策の結果であり、成果である(P・デミン・栗林寛幸訳『なぜ中間層は没落したのか アメリカ二重経済のジレンマ』慶応義塾大学出版会・2020)。だがそれは、ラストベルト地帯の労働者から見れば、支持してきた民主党の裏切りであり、自分たちは見捨てられたとみたのもやむを得ない。これに対して、トランプ大統領は、明瞭に「アメリカファースト」を掲げ、国内に産業を呼び戻し、移民を遮断し、彼らの不満の解消に尽力したのであるから、揺るぎない支持を得たのも当然であったろう。

なるほど歴史的な文脈を離れ、現状だけを切り取って見れば、彼らの失望と怒りはよく理解できる。それ故、冨永京子氏は先の特集記事で言う。「現実を見ると、自国優先の大統領を支持したい気持ちは上から目線で断罪できるものでは全くない」。確かに、その通りであろうが、ここには触れられていない他の側面もあり、それが大統領に対する支持以上の巨大な不満、批判として浮上しているのも現実である。まさにそれが「二つの国」米国の姿なのであろう(以下次回)。


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