2020年9月28,30日

9月28日・月曜日。晴れ。本日より、9/8・(火)で中断された、インカ帝国滅亡に関わる天然痘の問題に戻ることにしよう。

9月30日・水曜日。晴れ。前回の続きだが、はたして話が上手く運べるものやら覚束ない。これは今に始まった事では無いので、ご容赦あれ。

 

言うまでもなく、当時スペイン人達がこの疫病を免れたのは、彼らがキリストの神を信じていたからではない。彼らにはすでに免疫があったからである。では、それは何故か。反面、インデオには、何故、免疫が無かったのか。これには、長い物語がある。

感染症は、生体が細菌・ウイルスなどに汚染することで惹き起こされる病気であるが、その感染経路は、多様である。患者の看護や、彼の使用した物品、排泄物に触れる、あるいは彼から吐き出された息、唾液等に含まれる病原菌を吸収する、またその空気中に浮遊する病原菌を取り込んで発症する直接感染の他、菌に汚染された飲食物や病原菌を宿す動物を介しての間接感染がある。感染によって発症する病気とその劇症性も多様である。

ここでは、病気の原因である細菌とウイルスの差異とその感染の仕組みについては割愛するが(実は、筆者にはそんな能力もないからである)、例えばコレラ菌の病理作用はこうである。飲食物を介して患者の体内に取り込まれたコレラ菌は、しばしば「米のとぎ汁様便」と言われるほどの下痢や嘔吐と共に、強度の脱水症状を発症させる。かくて皮膚はたるんで青色を帯び、皺だらけの顔には青紫に変色した唇が張り付くという、コレラ特有の顔貌を呈する(ペストの黒死病に対し、「青の恐怖」とも言われる)。

コレラはさらに生命維持の低い臓器から順に機能停止に追い込む。手足の末端から心臓に至る血管の閉塞が特有の痛覚を患者に与え、こうして彼は死の到来を一段一段意識しながら最後を迎えさせられるという意味で、その酷さは募る。水分を失った血管には老廃物が溜まるばかりで、尿毒症と共に残された生命維持器官が一気に停止し、短時間のうちに彼は死するのである。江戸期に「三日ころり」と言われたのはこの意味であるが、これがだいぶ前にも触れた(3/27(金)を参照の事)本病特有の恐怖の実態である(以下次回)。


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