2019年7月19,26日

7月19日・金曜日。午後より晴れる。久しぶりの事だが、蒸し暑さにはマイッタ。

7月26日・金曜日。晴れ。今週は大学業務と重なり、多忙であった。読書の停滞、目を覆う。なお、本日は前回の文章を加筆、修正したに過ぎない。

 

各地方の再生の取り組みは多様であり、それぞれ必死であることは認める。だが、相も変らず一極集中的な考え方や手法を見せつけられると、それ以外の地方再生の構想、物語はないのかと、不思議な思いに駆られる。と言うのも、これまで様々な中小都市や地域の在り様に学び、必ずしも市圏の拡大や発展を目指さなくとも充実した「街づくり」が可能である事を見てきたからである。そればかりではない。東京と地方の構図が示すように、一極集中は周辺地域の疲弊はあっても、その発展は中々見ないからでもある。

6月7日・金曜日、『朝日新聞』夕刊の一面に「リニア・新幹線…鉄道網発達で開発拍車」「地方の大都市駅前花盛り」の見出しが躍った。対象となった大都市とは、名古屋、札幌、博多の3市である。

3市に共通した点は、見出しにあるように、巨大な交通網の結節点であり、それゆえの膨大な乗降客数を当て込んだ駅前開発である。名古屋の場合、1日の平均乗降客数は128万人であり、東京駅(131万人)に匹敵するらしい。札幌、博多の数値は出ていないが、いずれも新幹線の乗り入れでその数は飛躍的に伸びた。特に札幌市は、30年の冬季五輪・パラリンピックの招致に積極的で、その関連で海外富裕層向けの最高級ホテルの誘致も目指す。市幹部は「札幌の『顔』にふさわしい新たなシンボルをつくる」と鼻息は荒い。と同時に、ここに、市の意志と開発の方向性はあきらかである。

同じことは博多駅周辺開発にも言えるが、ここでは九州新幹線鹿児島ルートの全線開発により弾みがついた。東急や阪急百貨店と言った大手の出店が目白押しに加え、博多駅線路上空には高級ホテルやオフィス建設の構想が浮上している。その煽りを受けたか、これまで九州最大の商業地の名を謳歌して来た福岡・天神地区に陰りが見え始めたようである。もっとも、17年度の天神の売上高はいまだ博多駅地区の約2倍を維持するものの、11年度以降の伸び率は博多の37%に比べ、天神では約5%に過ぎない。この勢いが続けば両者の関係が逆転する日も遠くあるまい。

名古屋駅開発の影響力は両市以上のものとなろう。「鉄道で来てもらえる利便性がある」との言葉の通り、当地はすでに「売り上げ日本一」を誇る高島屋を擁する。同店は隣接商業施設との集積と相まって人気ブランドの誘致に事欠かず、商品の多様性は他を圧し、2000年以来の開業で日本一の地位を築いた。周辺地区と合算した売り上げ高は2058億に及び、名古屋の「栄」と栄華を誇った同地区の売り上げ(1915億)を大幅に上回った。もっとも、栄の場合は、失地回復の巻き返しを図ってか、最近、大型の再開発に取り組み、これが成功すれば、両地区の相乗効果から名古屋は更なる発展を期待できるかもしれない。

それにしてもである。「鉄道で来てもらえる」との言葉が端的に示すように、移動の便、多様な商品やサービス等を武器にした商業地区の一極発展は、隣接地域から顧客を強引に吸引することである。それを緩和し、両地区の共存の仕組みや対策が図られなければ、隣接地の疲弊は免れない。このような発展の図式を、私は都市の「サイフォン式発展」もしくは「サイフォン化都市」と呼びたい。この命名はわがオリジナルと自負するが、すでに誰かこう呼んだ人がいるかもしれない。

ここでのサイフォンの動力は、新幹線はじめとする巨大交通網と共に既存商圏の更なる開発・発展である。それは周辺地区ばかりか、遠方の他県からも吸引する威力を持ち、余程の独自性を持った地区でなければ、これには太刀打ちできないであろう。これが逃れられない歴史の必然ならばやみ難いが、であれば地方再生などと言った旗は降ろすべきであろう。これは、「滅ぶべきは、滅べ」と言うに等しいからである(以下次回)。


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