2021年2月15日

2月15日・月曜日。雨。

 

これまで当欄では、外国人技能実習生が直面する惨状について触れるところがあったが、朝日新聞(朝刊・2/13・土)の「技能実習制度」なる面談記事に触れ、筆者としてもやや慰められるものがあった。以下は、ラタナーヤカ・ピアダーサ佐賀大学名誉教授の論評である。

同氏は2014年から5年をかけ、中国、ベトナム、タイなどアジア8カ国の実習生、帰国後の元実習生の約1800人を対象に、主に日本での仕事の内容、給与面についてアンケート、面談をされてきた。その結論として、7割が「日本で得た資金と知識を元に、経済状況が改善した」と回答し、本制度は「アジアからみれば、貧困対策として機能している」とされたのである。

たしかに、実習生は各地域の最低賃金で働かされていたが、それでもベトナムの元実習生の多くは、自国の平均月収の6倍以上の収入を得、滞在中に百万から三百万円ほど貯蓄ができたと言う。もっともその生活は、以前にも見たとおり、ギリギリのものであったのだが。

ただし、本制度の趣旨である「技能移転を通しての国際貢献」については、理念倒れの感を免れ難い。受け入れ先の会社・420社に行った聞き取り調査では、実習生はもっぱら「労働集約的な繰り返しの作業」に就かされ、これでは何らかの技術の習得どころか、単なる労働力不足の補填に過ぎないからである。それは彼らの9割が、帰国後の職種を問われ「研修と関係の無い仕事」であった、と回答している事からも明らかであろう。それでも同氏は、「日本の会社が組織的に取り組む『5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)』やあいさつの仕方などを学び、帰国後の就職に役立っていた」と評価されたが、これは少しでもこの制度を擁護し、盛り立てようするピアダーサ氏の精一杯のサービス精神のあらわれではなかったか。

このように同氏は、実習生制度のメリットを最大限引き出そうとされるが、にも拘らず、次の点は弁護のしようもない。「日本に来るまでに、母国で送り出し機関などに100万円近くの手数料を支払っている。職場を変えられない実習生はひどい目に遭っても借金返済のため働き続けないといけない。ブローカーの存在は制度の最大の問題だ」。「企業に労働関係法を守ってもらうには企業まかせにしないことが不可欠だ。コロナ禍で突然、解雇され、住むところにも困る実習生がでた」。

では、どうする。「地域社会に開かれたシステムにすることだ。佐賀大の留学生は衣食住などで困ったときに助けてもらうなど地域住民に守られている。実習生は毎日、工場と会社の寮を行き来し、地域社会との交流がない。実習生の劣悪な労働環境を地域の人が知ったら許さないだろう」。至言ではなかろうか(この項、終わり)。


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