2025年05月26,30日

5月26日・月曜日。曇り。この所、涼しい日が続いて、当方としては何よりのこと。願わくば、今後も、かくあれとただ祈る。

5月30日・金曜日。雨。肌寒し。

承前。さて、ホープレヒトに戻ろう。市街の汚水は圧力伝送管によって灌漑農地に送られるが、これはどう処理されるのであろう。勿論、農地にそのまま潅水されるのではない。広大な農地はいくつかの耕作区に分割され、入念な農地造成がなされる。各耕区ではまず高台地にスタンドパイプ場が設置され、そこから汚水は埋設された本、支管の導管網を介して沈殿槽、作付け区域に分けられた農地へと送られる。

沈殿槽に達した汚水はヘドロ分を大方濾過されて、灌漑農地へと送られる。そこに植えられた農作物が汚水のあらかたを吸収し、その消費力は旺盛である。当初、継続的な大量の潅水は農地の泥土化を来すのではないかと懸念されたが、まったくの杞憂であった。それでも残る潅水後の余水は、各農地に掘られた側溝から隣接の川へと放流される。では、それによる河川の汚染は、心配ないのか。ホープレヒトは言っている。「排水される下水はまだ濁りはあっても、しかしそこには排水汚物は認識されず、それゆえ排水管から河川に放流される水はもはや浄化され、透明かつ無臭である」。

ここで作付けされる農作物とその生育はどうか。膨大な量の汚水を吸収できる農産物であると同時に、市場性のある農業経済的に意味あるものでなければ継続できない。そこで次第に分かってきたことは、トウモロコシ、蕪、キャベツといった幅広の茎や大量の葉を持つ植物が最適とされ、その出来栄えも品評会の受賞を受けるほどであったと言う。「ある企業は、早速、酢キャベツの製造販売に乗り出し、馬車鉄道会社、王室厩舎、酪農家等からの飼料購入も相次いだ」。他にも野菜ではホウレン草、人参、玉ねぎ他、穀物では大麦、小麦、ライ麦、馬鈴薯等々、さらには果実類も手掛けられ、「実に多様な農作物が栽培作付けされていくのである」。

ここで忘れてならないことは、汚水の灌漑農地法の第一の目的はベルリン市の限度を超えた環境衛生の悪化に対する解決策の模索であり、農業的成果を目指すものではなかった。しかし、関連する多様で大掛かりの実験がなされた後、ただ土地の濾過機能に期待した潅水では河川や地下水の汚染を回避できず、上にみた植物の育成と結合させた灌漑方式こそが最良であると結論ずけられたのであった。それは農業と汚水浄化の幸福な結合であったと言えようか(以下次回)。


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