2020年7月1日

7月1日・水曜日。曇り。本日は年後半の初日である。新たな心で立ち向かおう、と意気込むには、国内外を覆う暗雲が巨大に過ぎる。世界のコロナ感染者は1000万人に達し、収束どころか拡大している、とはWHOの警告である。中国、朝鮮半島の政治状況、そして我が国自身のぬぐい難い閉塞感が、これに重なる。こんな時には、CDで上質の落語を聴くのが一番か。

 

昨日、注文しておいた、気になる本がやっと届いた。左右社編集部編『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』(左右社・2020)である。言うまでもなく、自分の日々の生活は誰かの仕事によって支えられている。だが、それが当たり前すぎて、改めてその事に思いを寄せる、そんな気持ちすら忘れ去って何年になろうか。或いは、その仕事に対してはそれなりの対価を支払っているのだから、それで済んでいる。だから、別段、それ以上の事を考えるまでもない。

しかし、こんな思いが募れば、筆者もまた、この所見てきたエッセンシャルワーカーに対する、人々の心ない態度と変わらないものになりかねない。イヤ、すでにそうなっているのか。そんなわが心根を見透かしたように、本書の表紙のタイトルを取り巻くようにして付された、「何に対しても私と関係ないって思ったら 終わりじゃん?」との一文が突き刺さる。

本書の誕生はこうである。この度のコロナ禍は、働き方の変容はまだしも、仕事そのものを消滅させるという、多くの酷い事態をもたらしたが、こうして蒙った仕事上や生活上の危機を、人々は一体どう乗り越えようとしているのであろうか。この事に思い至った左右社編集部は、緊急事態宣言の出された当日、77人の多様な職業の人たちに、そうした日々の最中を記した日記を書いてくれるよう依頼した。それを構成してなったのが本書である。

それゆえここには有名・無名、また年齢を問わない人々の生の生活が、それを支える仕事の苦悩と共に記されており、期せずして本書は「ひとつの仕事は、誰かの生活につながり、その生活がまた別の人の仕事を支えている。本書は仕事事典であると同時に、緊急事態宣言後の記録であり、働く人のパワーワードが心に刺さる文学作品」ともなり得たのである(「はじめに」)。この一文の中に、筆者は前回、ただ提起したのみで、答えられなかった問題の回答を、一つ見る思いである。如何なる職業であれ、社会につながり、誰かを支えているのである。それ故に貴く、どれも疎かにされてはならない、と(以下次回)。


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