2020年6月17日

6月17日・水曜日。晴れ。本日、暑し。だが湿度は低く、風さやか。

 

こうした言動が、何故、当人を目の前にしてさえ、悪びれもせず、平然としてとれるのか。言う側の神経の鈍麻もさることながら、介護職に対する根強い蔑視感と共に、替わりは幾らでもある、といった使い捨て文化、風潮の結果なのであろうか。川口氏は言う。「介護職に対して『簡単、単純、誰でもできる、学歴もいらないつまらない労働』という思い込みがあるように感じます」。

だからであろう。ネット上での介護は、「底辺職」というキーワードが付され、「小・中学生のなりたい職業ランキング」には登場しない。さらには、高校生の進路指導が介護職を選択肢から外し、たまにこの職業を目指そうとする生徒がいても、「介護だけはやめとけ」と諭される。ましてや、介護養成施設の職員が訪問した進学校では「ほとんど相手にされません。まるで、その学校の卒業生は、一生介護とは無縁であるかのようでした」。

介護の現場と今後が、まざまざと浮かぶようではないか。だが、政府統計によれば、65歳以上の高齢者数がピークに達っするのは20年後の2040年であるが、その時点で要する介護職員数は現在より100万人以上の増員が必要である。その実現は、現状では先ず見込みはない。外国人を当てにしても、最大数万人程度の「焼け石に水」でしかなく、こんな事を当てにした将来像は、現状をまるで分っていない。

「施設に勤務する職員が足りなければ、あなたの親やあなた自身が要介護になっても入所を断られます。訪問介護事業は過去最高の倒産件数を記録しました。人出不足が主な理由です」。しかし、養成施設への入学希望者は、見たように漸減し、これを承けて専門学校、短期大学も、文科省の指導もあって、この10年間で70校ほど縮小した。確かに、高卒後、直ちに介護施設で働きながら介護福祉の国家資格を取得する道もあるが、「18年の人生経験しかない若者にとって介護の現場はかなり難しい。」そのためにはやはり、「知識や理論、技能など専門的な裏付け」が必要になる。しかし折角学校を終了した人たちも、離職するケースがあとを絶たない。その理由は、低賃金の上に人出不足からの現場の多忙、さらには身につけた専門性や能力が生かされない現状に対する失望からである。

取るべき対策は、まず政府が介護職の重要性を理解し、養成施設への助成は勿論、国民一人ひとりが「介護に抱くネガティブイメージと主面から向き合う」事だと、川口氏は言う。まさに、当記事の見出しが、「介護職にリスペクトを」と題される理由である。専門家による介護とは、それまで頑なであった高齢の被介護者が、彼に寄り添う事で「安心して自分を開示しはじめる」ほどの治癒力を持つと言う。だがそこに至るためには「介護の専門性を備えた実践力」を養わなければならない。とても誰でもが簡単にできる職務ではないのである(次回に続く)。


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