2020年5月29日

5月29日・金曜日。晴れ。この度、明治大学監事を今月末で退任する。一期4年間の務めであった。今年、77歳の身としては、良い潮時だが、これで大学とは縁切りか、となると何がしか寂しさは残る。だが、これは未練だ。まだボケてはいない(と思う)。一日平均8千歩ほどの脚力もある。このエネルギーを今後は当社の発展に捧げたい。今後とも宜しく。

 

前回の問題をもう少し引継ごう。現下のコロナ禍が、われわれの社会の奥深くに潜んで、普段は気付かずにいる弱さや矛盾をさらけだした。その姿を多少とも残すことは記録的価値があるばかりか、今後の参考にもなろうからである。資料は朝日新聞・5月10日(日)・4面「ニュースワイド」である。

ここでは「エッセンシャルワーカー」と言われる、市民生活を支える人たちの仕事ぶりが主題である。コロナ感染は、まず人々の外出を制限し、住居内に押し込んだ。同時に、飲食店、商業施設の休業を強いることになった。だが、人々の生活は続く。食糧他の生活物資は確保されなければならない。これはデフォーの時代とて変わらない。当時は召使や奉公人に命じて、それらは調達されたのである。

現在、その役割を果たすのは、物流業界である。ネット等で購入した物資はこうして届けられる。「コメ、野菜、冷蔵食品、生活用品」など、「ありとあらゆるものを届けている」大手宅配業者のパート女性は、それらの「荷物を配り終えるまで朝から午後10時過ぎまで」かかる重労働を連日強いられたと言う。普段の搬送代金が一日2万円前後であるのに、10万円近くになるという事実からも、尋常ならざる繁忙さである。当然、彼らの感染リスクは高まるが、しかし会社からのマスクの支給は無く、自前で確保しなければならない状況から、その労働環境の過酷さが分かろう。

だが、それ以上に苦痛なのは、お客との直接の応答である。「玄関先に荷物を置くことを提案したら、ある男性から「おれは感染していない。中に置いて」と言われた。ある女性からは「配達員は汚いので、宅配ボックスを設置したいから補助金が出ないかと区役所に相談したの」とひどい言葉があった。(家にこもる―筆者注)うっぷんを晴らすかのように「(代引きの)お札につばをかけてやろうか」と別の男性から言われたことも。冗談のつもりだったかもしれないが女性は本当に怖かったという」。

こうした仕事に疲れ果てて休む同僚もいるが、しかし蓄えに事欠き、稼がなければ暮らせない配達員に対し、上司は見透かしたように言う。「飲食店の人はいま働けなくて困っている。仕事があるだけマシでしょう」。たまにはお客からの感謝や励ましも受けたり、また社会への献身として、この仕事が「美談」にされるが、ことはそれでは済まない。このまま放置すれば、われわれは社会の基本的な土台の一つを磨り潰すことになりかねない。

これに劣らず身につまされるのは、介護事業関係の仕事である(以下次回)。


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