2019年11月8日

11月8日・金曜日。晴れ。近所の鶴巻公園の広葉樹は流石に色づき、落葉し始めるが、緑を留める大樹も多し。過日、台東区のロータリクラブに招かれ、30分の卓話を行う。題して「縮み社会は甦るか」(浅草ビューホテルにて)。時間が短いだけに、緊張頻りであった。そのレジメを以下に掲げておこう。

11月6日・水曜日。於・浅草ビューホテル。

縮み社会は甦るか?     金子光男

1. わが国の将来的な人口推移(グラフ参照・河合雅司『未来の年表』8頁)(講談社現代新書)より。

移民政策を取らなければ、人口減少は止まらない。

2. 19世紀から20世紀にいたる経済構造の大転換とその意味。R/J.ゴードン・高遠・山田訳『アメリカ経済  成長の終焉 上・下』(日経BP社)より。

例えば、「馬と鉄道に代わる自動車―発明と漸進的な改良」。連続的な革新的技術の誕生。そこから生み出される長期的な社会の変革、終わりなき需要と経済成長の達成。

これに匹敵する技術革新、経済発展は、現在、見通せない。IT産業、経済のグローバル化の革新性と限界。

3. 水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)より。

金利ゼロ=利潤率ゼロ=資本主義の死。

4. では、そうした社会の中でどう生きるか。

 

卓話要旨。金子光男

現在のわが国出生率(1.42人)を前提に、また移民政策を取らないとして、今後の人口数を推定すれば、2100年時点での国民は半減し5千万人ほどになると言う。これによって見るに、年々、生産力、需要は縮小せざるを得ない。

さらに、人口減少をカバーし、経済発展を支える技術革新の質の問題を見ると、AI、IT産業が重要である。これらはたしかに情報、通信分野を主としながら生産分野にも革新的な変革を呼び、生活改善とそれによる巨大な需要を惹き起こしていることは間違いない。しかし、それとても、19世紀から20世紀にかけた経済・社会の大革新にはとても及ぶべくもない。これがゴードンの結論である。

こうした主張は、水野和夫氏の所論によっても裏付けられるようだ。氏によれば、現在の金利ゼロの現象は利潤率のゼロを意味し、経済活動は単純再生産以上には出ないことの結果である。

これらを勘案すると、わが国社会の今後の趨勢は縮小していくのではないか。われわれが初めて直面するこうした局面に対し、ではいかなる生き方、生活があるのだろうか。


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