2019年9月19日

9月19日・木曜日。晴れ。9/3日以来、3回にわたりアマゾン流域の熱帯雨林を扱ってきたが、今月16日(月)、朝日新聞が同問題を大々的に取り上げた。その論調は筆者のものに近く、わが意を強くしたが、朝日は問題提起に留まったのに対し、本欄はその解決策にまで及んでいる点で、深みがあるとの一読者の評を得、大いに気を良くした。

なお本日は、今月1日刊行の『明治大学広報』(731号)・論壇欄に掲載されたわが一文を掲げておきたい。因みに、本文に対する学内の感想はおおむね良好であり、特に論題の案件を直接扱う部署では、かなり衝撃的な内容であったらしい。

 

創立140周年記念事業に寄せて――夢を語ろう――   監事 金子光男

 

一つ、夢物語を書かせて頂こう。2年後に創立140周年を迎える本学は、現在、その後の150周年祭を見据え、さらなる発展の礎となるべき様々な事業を企画している。以下は、この企画立案の一助になればとの思いに発したものである。

「御茶の水地区再開発に向けて――歴史と文化の薫る潤いのある街づくり」なる研究プロジェクトの設置を提案したい。だが、これは単に駿河台キャンパスの再開発案ではない。北に神田川を画し、明大通り、靖国通り、白山通りに囲まれた地区全体の開発プランの策定である。本学はそうした環境の下で新生し、21世紀を拓く新たな「暁の鐘」を撞き始めるのである。

思うに当地区は、都心に残された数少ないもっとも重要な開発対象地区ではないのか。ならば、大手ディベロッパーにとっては垂涎の的であろう。当地の歴史的、文化的意義は言うに及ばず、皇居はじめ政財官界の中心地に隣接しながら、ビルと家屋群が雑居する。路地は入り組み、緑は無きに等しく、憩う場もない。古書店巡りを除けば、散策の楽しみは皆無である。昔からの住人は高齢に達し、今更建て替えや転居も決断しかねる。と言って、今後を思えば、さまざま不安に感ずる向きも多かろう。とすれば、当地区の再開発には行政的な関心も強いとみる。

当計画案の作成にはどれ程の時間と経費を要するであろう。本郷台の南端を頂点とし、神保町まで一気になだれ落ちる地形上に、「暮らしてみたい街」を浮き上がらせたグランドデザインが描かれなければならない。そのためには、単なる都市工学・開発の視点を越えて、無数に錯綜する利害関係の調整や経済的な諸問題等、要するに理科や文化を総合した学際的な観点からの研究が不可欠だからである。ここに本学は独自の研究手法・領域を開発することになるが、それが孕む可能性は計り知れないものがあるはずだ。

のみならず、千代田区、関係省庁の知見に学ぶところも多かろう。国内外の都市開発プランナーを招いた国際シンポジウムでは、都市再生の物語を紡ぐ。その成果は、逐次、学術書として刊行されるのだ。魅力的で実践性の高い計画だと分かれば、一級のシンクタンク、ディベロッパーも黙ってはいまい。となれば、本学は新たな研究パートナーと共に、従来にない水準の研究支援を期待しうるではないか。

確かに計画案は案に過ぎない。だが、発想力のあるプランニングは、これに触発されて多くの構想案を生みだし、一つとなって現実を動かす起動力となりうる。19世紀末、汚濁と汚わいに塗れたベルリン市が世界屈指の都市へと甦った事実がある。折しも鴎外が「ウンテル、デン、リンデン」と謳うように闊歩したのはその頃であった。

本学のかような知への貢献は、「明治の学」を改めて天下に知らしめるに違いない。


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