2018年6月5日

6月5日・火曜日。晴れ。今のところ爽やかな気候だが…。

 

だが、このような消滅集落は、例外的な一事例という訳ではない。それどころではない。その一、二歩手前にある集落、特に高齢者比が五割以上で、残存世帯20戸未満の「限界的集落」は、島根県内では442か所に及び、その内「危険的集落」(高齢者比7割以上、残存世帯10戸未満)は84か所あるという。まさに衝撃的な数値であり、これが明日のわが国の先触れであるとすれば、同県が「縮小ニッポンの未来図」と称されるのも理由のない事ではない。

こうした集落の人口減少には、単なる人口減少とは異なる深刻な意味合いがありそうである。普通、ある域内(国や地方、都市や村落等)の人口の増減は次のような計算式で示される。人口変動=自然的増減+社会的増減=(出生-死亡)+(転入-転出)。見るように、人口変動は自然的要因と社会的要因の複合、合成の結果である。ここで自然的増減の意味は説明するまでも無かろう。出生数が死亡数を上回れば人口増になり、逆は逆になる。また、社会的増減の原因については多様であるが、これはこう考えられる。地域への転入者にとって、転入先が彼の転出地よりも経済的、文化的他何らかの利益があると見なされたから、転入したのであり(転入地のプル効果という)、転出者の他地への移転は、元の土地に留まることが彼にとって不利益であったからである(これを転出地のプッシュ効果という)。

例えば、地方の若者が都会に出るのは、多くはそこでの経済的なチャンスに魅かれてのことであろう。その場合、かれの故郷の出生と死亡が均衡していても、人口減少は免れ得ない。これまでの地方の人口減はそのようにして説明されてきたのであるが、消滅・限界集落の場合、それとは一段違った段階に置かれている点で深刻なのである。つまりここでは、社会的要因である「転入-転出」の項目はもはや消滅している。転入者は見込めず、転出者はすでに出払ってしまった。残るのは高齢者ばかりで、出生は望めないとすれば、作動するのは死亡の項目のみであり、結局、その集落は消滅する他はないからである(以下次回)。


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